椎名純平さんの、完成待ち遠しい新譜
なんの因果か、で始まると、まっぽの手先!と言いたくなりますが(スケバン刑事ですよ)、私、東郷さくらと椎名純平さんの因果。因果っていうほど重くはないですけど(笑)
鹿児島での縁が3度あったことをキッカケに、新宿でツーマンライブご一緒したのが今年の3月。あれから約2カ月の間に、なんとも素晴らしいアルバムを完成されていて。そのレコーディングほやほやを聴かせてくださったのが、つい3日前。もう音に「好き」が詰まってて、聴いてる私がドキドキ。音数少なく、でも厚い音。私が今一番「欲して」いたものに神様が気づかせてくれたような感覚です。初期衝動のような。
この感覚を、このタイミングで得られただけでも純平さんとの出会いの意味があったと思うんです。
で!純平さんがこのアルバムへの熱い想いをツイッターに上げていたので、ここに長文転載します(許可済み)。するしかない!(^^)b
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① マニアックな音楽の制作に関わる話を書きます。分かりづらくて申し訳ない。でも、あなたを置いてけぼりにする話ではないと思うので、機材などの固有名詞はざっと飛ばしながらお読みいただけると嬉しいです。
② 今回のアルバムには1990年代初頭の音が欲しいと思い、まずはその時代のシンセを買い漁った(KORG M1、YAMAHA TX802、TX81Z。今その辺の機材はとってもお安い)。今回はそれらとAKAI MPC1000とYAMAHA Motif Rack XSでトラック(歌以外の楽器の部分)を作っていった。
③ 少し話はそれるけれど、そもそもなぜ90年代初頭の音にしたいのかと言えば昨今のブームの影響なのは間違いない。ブルーノ・マーズの新作を聴いて嫉妬しなかったと言ったら嘘になる。そこを起点のひとつに、でも90年代もいろいろあったよなと思い出しながらアルバムの構想を練っていった。
④ 2018年現在、音楽制作はPC一台でなんでも出来るのは皆様ご存知の通り。ヴィンテージから最新のシンセ、むちゃくちゃリアルで表情豊かなピアノ(一音弾くだけで泣けるレベル)
⑤最高のスタジオで最高のエンジニアが最高のマイキングで録ったような密度濃くオープンな響きのドラムからどっかの国に残っているのであろう聞いたこともない不思議な民族楽器、果てはこの世のものとは思えない音色まで…そんな音がその辺のノートPCや、何ならスマホで鼻歌交じりに繰り出せる時代だ。
⑥ おまけに、大きなスタジオでしか見たことのない高級な(普通に車が買えるレベルのお値段だったりする)アウトボードまでなんでもあるぜと来たものだから、僕ら音楽家がPCに向かう時の自由度と言ったらまさに神の領域。超全能。
⑦ なのだけれども。ぼくはそういうのに昔からテンションが上がらなかった。そもそも、ディスプレイ見ながらマウスでかちゃかちゃやって音色選んで…ってのにどうしても乗れなかった。おまけに、PCだと何でも見えちゃうもんだから見えちゃうついでに余計なことをしてしまう。
⑧ 全体像が見え過ぎてしまうばかりに細部を見るのが億劫になったり、逆に見えすぎる細部にこだわりすぎて謎の細部に1日費やしたり。来たメールに返信したり、SNS見ちゃったり、SNSずっと見すぎてそのついでに少し作業に戻ってみたり、それに飽きてゲームしたり
⑨ それにも飽きていろいろ動画を見ちゃったり、酒飲んでからゲームしたあとまた動画見ちゃったり。それでそのまま寝ちゃったり。そして起きて後悔しちゃったり。
⑩ その点、今回はものすごくシンプルに集中して作業が出来た。それはトラックの作業では全くPCに触れなかったから動画を見るチャンスがそんなになかったことがひとつ。(見てたけど)何より大きかったのは、音楽を作る上での身体と頭の動きがシンプルかつスムーズだったからなのかなと思う。
11.冒頭あたりに列挙した90年代の機材は、現代のものと比べるとかなり性能が限られている。今どきのゲームと、ファミコンゲームの性能差を想像していただければ、だいたい合っているのではないか。例えばファミスタ’87がどんなゲームかぼくらは知っている。
12.それ以降の野球ゲームたちと野球そのものの再現性や精度の差は歴然なれど、しかしゲーム性の素敵さは普遍的だ。だからその味が欲しくてわざわざ引っ張り出す価値があったりする。それと同じで、当時の機材はオールマイティではないけれど「この音が欲しい時はこの機材を試すか」となる。
13.するとどうなるか。ぼくは作業中に「この音が欲しくて」作業場のあちこちに身体を動かすことになる。PCの前を離れ、機材の前に立ち、求める音を探す。せっかく機材の前に来たのだから、求める音を探すことに集中する。もしPCの前にいたとしたら、今ごろ素敵な動画を探し始めていたところだ。
14.そんな風に、作業の流れが「これしかできない」「この機材の前に行く」ことで、その動作とともに頭がそのモードに切り替わることが習慣化したことで、とてもシンプルに頭を研ぎ澄ますことができたのが、この制作作業の成果のひとつだったのだなと思う。
15.そんなわけで、今回のアルバムは一音入魂というと恥ずかしいが、ひとつひとつの音に集中して、アレンジを組み立てていくことになった。その代わり現代のポップスとしては異例に音数が少ないものになった。
16.それが皆さんにとって楽しめる音楽になったかどうかはまた別の話ではあるけれど、ぼくにとってとても有益な音楽的冒険だったのは間違いない。そうして完成した音楽、皆さんに愛して頂けるといいな。
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